個人事業主として独立が決まった際、考えなければならないのが健康保険の選択です。
会社員時代は会社が手続きをしてくれましたが、独立後は自分で最適な保険を選び、加入手続きを行う必要があります。
しかし「どの健康保険に入ればいいの?」「保険料を安く抑えたいんだけど…」と悩む方も多いのではないでしょうか。
個人事業主が加入できる健康保険は一つではないため、自分の状況に合った制度を選ぶことができれば保険料が安くなる可能性があります。
この記事では、個人事業主が加入できる4つの健康保険制度について、保険料の計算方法や加入条件、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
目次
個人事業主が選べる健康保険

会社員を退職して個人事業主になると、それまで会社が加入手続きをしていた健康保険を自分で選んで加入する必要があります。
選択肢は大きく分けて4つです。
国民健康保険
国民健康保険は、市区町村が運営する健康保険制度です。
自営業者、フリーランス、パート・アルバイトなど会社の健康保険に加入していない人の多くが、この保険に加入しています。
保険料は前年の所得と世帯の加入者数に応じて決まるため、人によって金額は様々です。
国民健康保険は、お住まいの自治体の窓口で手続きをすれば加入できます。
会社を退職した場合は、退職日の翌日から14日以内に届け出る必要があるので注意しましょう。
医療機関での自己負担割合は原則3割で、会社員時代の健康保険と同じ水準の医療を受けられます。
任意継続
任意継続は、退職前に加入していた協会けんぽや健康保険組合の健康保険を、退職後も最長2年間継続できる制度です。
任意継続を選ぶ場合、退職日の翌日から20日以内に申請する必要があり、この期限を過ぎると加入できないので注意が必要です。
なお、会社員時代は会社が保険料の半分を負担していましたが、任意継続では全額自己負担になります。
国民健康保険組合
国民健康保険組合は、同じ業種で働く人たちが組織する、国民健康保険法に基づく健康保険制度です。
建設業、美容業、医師、税理士など、業種ごとに組合が設立されています。
保険料が定額制になっている組合が多く、収入が多い人ほど保険料を抑えられる可能性があります。
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家族の扶養に入る
配偶者や親が会社員や公務員として健康保険に加入している場合、扶養に入ることができます。
ただし、個人事業主として一定以上の収入がある場合は対象外です。
一般的には年収130万円未満が基準ですが、加えて被保険者(扶養する側)の収入の半分未満であることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。
自分に合った健康保険の選び方

上記で紹介した4つのうち、自分に合った健康保険はどのように選べばよいのでしょうか。
ケースバイケースで一概には言えませんが、基本的な考え方は以下の通りです。
- ・前年の所得が高い人は、任意継続
- ・前年の所得が低い人は、国民健康保険
- ・該当する業種に属している人は、国民健康保険組合
- ・年収130万円未満で扶養条件を満たす人は家族の扶養
所得に応じて選ぶ
個人事業主の国民健康保険料は、前年の所得を基準に計算されます。
前年の所得が高い場合は、その分だけ国民健康保険料も高額になる可能性があります。
退職前の給与が高かった人は、国民健康保険料が大きくなるケースが多いため、任意継続の保険料も必ず確認して比較することをおすすめします。
任意継続の保険料は、加入していた健康保険の公式サイトで公開されています。
参考記事:全国健康保険協会|任意継続の料金額
一方、国民健康保険は所得に応じて保険料が変動する仕組みのため、退職前の給与がそれほど高くなかった人や、開業2年目以降で前年の所得が低い人は保険料が相対的に安くなります。
国民健康保険組合に加入できる業種の場合は、組合ごとに保険料の体系が異なるため、自分の所得と比較してどちらが有利か確認して選びましょう。
収入が少ない場合は家族の扶養に入る
配偶者や親が健康保険に加入している場合、扶養に入ると保険料の負担がありません。
一般的に年収130万円未満が基準で、個人事業主の場合は「収入−経費」で算出した事業所得で判断されます。
被扶養者の認定では「被保険者の収入により生計を維持しているか」が重視され、協会けんぽでは「被保険者の収入の2分の1未満」が判断の目安として扱われています。
健康保険組合は独自基準を持つ場合があるため、加入している保険のルールを確認してください。
開業直後で収入が不安定な時期は扶養に入り、収入が増えたタイミングで国民健康保険に切り替えるという方法もよいでしょう。
切り替え手続きの方法

ここからは、健康保険の切り替え方法についてお伝えします。
期限を過ぎると加入できない制度もあるため、退職後は速やかに手続きを進める必要があります。
国民健康保険への加入
国民健康保険に加入する場合は、退職日の翌日から14日以内に住んでいる市区町村の窓口で手続きをします。
必要な書類は、健康保険の資格喪失証明書と本人確認書類です。
資格喪失証明書は、退職した会社から発行してもらいます。
手続きが完了すると保険証が交付され、医療機関を受診できるようになります。
保険料は退職日の翌日から発生するため、手続きが遅れても遡って支払う必要があります。
手続きを忘れたまま医療機関を受診すると、医療費を全額自己負担することになるため注意してください。
任意継続の申請
任意継続を選ぶ場合は、退職日の翌日から20日以内に、それまで加入していた健康保険組合または協会けんぽに申請書を提出します。
国民健康保険は14日以内という期限を過ぎても加入できますが、任意継続は期限を過ぎてしまうと加入できなくなります。
任意継続被保険者資格取得申出書、場合によって住民票が必要です。
協会けんぽの申請書は協会けんぽのWebサイトからダウンロードできます。
健康保険組合は組合ごとに入手方法が異なるため、加入していた組合の案内に従って書類を受け取ります。
保険料は退職後すぐに発生し、支払いのため毎月自分で振り込む必要があります。
保険料の支払いが遅れると資格を喪失してしまい、再度任意継続に入ることはできません。
国民健康保険組合への加入
国民健康保険組合に加入する場合は、各組合の窓口または郵送で手続きをします。
組合ごとに必要となる書類は以下のようなものです。
・加入申込書
・事業を確認できる書類(開業届の控えなど)
・本人確認書類
・前年の所得がわかる書類
加入が認められると保険証が発行され、医療機関で利用できます。
ただし審査があるため、国民健康保険より手続きに時間がかかることがあります。
家族の扶養に入る手続き
配偶者や親の勤務先で扶養手続きを行います。
提出書類は健康保険組合や勤務先によって違いますが、以下が一般的です。
・扶養認定申請書
・収入状況を確認できる書類(確定申告書・給与明細など)
・本人確認書類
・住民票
個人事業主の場合は、「収入=売上−経費」 で判断されます。
扶養の基準は加入している健康保険ごとに異なるため、それぞれの保険で確認が必要です。
まとめ
個人事業主が選べる健康保険は、国民健康保険、任意継続、国民健康保険組合、家族の扶養の4つです。
前年の所得が高い場合は任意継続、開業から2年目以降で所得が低い場合は国民健康保険が有利になることが多く、業種によっては国民健康保険組合も選択肢になります。
国民健康保険の手続きは退職日の翌日から14日以内、任意継続の申請は20日以内に行う必要があるため、退職が決まったら早めに準備を進めておきましょう。
扶養に入れる条件を満たす場合は、扶養に入るのが最も保険料を抑えられます。
それぞれの保険料を比較して、自分に最適な健康保険を選びましょう。