ITフリーランスの人口は年々増加傾向にあり、働き方改革やリモートワークの普及により、今後もさらなる成長が見込まれています。
この記事では、ITフリーランス市場の最新データと動向について解説します。
目次
ITフリーランスの人口規模
フリーランススタートの市場調査によると、2025年時点でITフリーランスの人口は約16.2万人と2015年(約10万人)と比較して約1.6倍に成長しています。
参考記事:フリーランススタート|ITフリーランス市場調査レポート
日本全体のフリーランス人口は2024年時点で約1,300万人規模に達していると言われています。
このうちITフリーランスが約16万人を占めるということは、全体の約1.2%に相当します。
ITフリーランス人口が増加している理由

ITフリーランスの人口増加には、どのような理由があるでしょうか?
働き方改革とリモートワークの普及
近年フレキシブルな勤務体制やリモートワークを導入する企業が増えていますが、この動きがフリーランスという選択肢をより現実的なものにしています。
IT業界では、業務の性質上リモートワークとの親和性が高く、場所にとらわれない働き方が実現しやすいという特徴があります。
地方在住でも首都圏の案件に参画できるようになったことで地域格差が縮小し、フリーランスとして活動できる人材の裾野が広がっています。
企業のIT人材需要の変化
日本では、人口減少により深刻な人手不足の問題があるため、企業は人材の確保方法を多様化させています。
例えば正社員に限らず、フリーランスや業務委託といった柔軟な契約形態を積極的に活用する企業が増えています。
そのうちフリーランスを活用する理由は2つあります。
1つ目は、プロジェクトに応じて必要な人員を必要な期間だけ確保できる柔軟性です。
大規模なシステム開発やDXプロジェクトでは、特定の技術やスキルを持つ専門家が一時的に必要になることがあります。
このような場合、フリーランスであれば採用コストを削減できて便利です。
2つ目は、専門性の高い技術への対応です。
クラウドネイティブ技術や生成AIなど、新しい技術分野では社内で人材を育成するよりも、既に経験を持つフリーランスを活用する方が迅速にプロジェクトを進められます。
副業解禁の影響
副業を解禁する企業が増えているということも、ITフリーランス人口が増えている要因です。
正社員として安定した収入を確保しながら、フリーランスとしても活動するという新しい働き方が広がっています。
また、副業を通じて多様なプロジェクトや技術に触れることで、本業では得られない経験を積むことができ、キャリアの幅を広げる機会となっています。
企業側も、副業を認めることで従業員のスキルアップやモチベーション向上につながることを認識し始めています。
外部でのプロジェクト経験が本業にも良い影響を与えるケースが増えており、win-winの関係が構築されつつあります。
職種別のITフリーランス分布

ITフリーランスを職種別に見ていきましょう。
エンジニア系職種
ITフリーランスの職種として最も多いのは「システムエンジニア(SE)」(25.2%)で、次いで「Webディレクター」(12.4%)、「プログラマー」(12.2%)となっています。
エンジニア系職種はITフリーランスの中で最も人口が多く、市場も成熟しています。
特にWebアプリケーション開発、モバイルアプリ開発、インフラエンジニアリングの分野では、フリーランスとして活動する人材が豊富です。
開発エンジニアの中でも、特定のプログラミング言語や技術スタックに特化した専門家は高い需要があります。
例えば、PythonやGo言語といったモダンな言語、ReactやVue.jsといったフロントエンドフレームワーク、KubernetesやDockerといったコンテナ技術などの経験を持つエンジニアは、多くのプロジェクトで求められています。
企業が採用・活用しているITフリーランスの職種として最も多いのは「クラウドエンジニア」(41.2%)で、「エンジニアリングマネージャー」(39.6%)、「ITコンサルタント」(34.8%)、「システムエンジニア(SE)」(34.4%)、「PdM(プロダクトマネージャー)」(33.8%)が続いています。
インフラエンジニアについても、クラウドサービスの普及に伴い、AWS、Azure、Google Cloudといったパブリッククラウドの構築・運用ができる人材の需要が高まっています。
オンプレミスからクラウドへの移行プロジェクトや、既存クラウド環境の最適化など、企業のDX推進において重要な役割を担うため、フリーランスとして高い報酬を得られる傾向にあります。
参考記事:フリーランススタート|ITフリーランス市場調査レポート
デザイナー・クリエイター系職種
UI/UXデザイナー、Webデザイナー、グラフィックデザイナーなどのクリエイティブ系職種も、フリーランスとして活動しやすい分野です。
特にUI/UXデザイナーは、デジタルプロダクトの重要性が高まる中で需要が増加しています。
ユーザー体験を最適化し、ビジネス目標を達成するためのデザインを提供できる人材は、スタートアップから大企業まで幅広く求められています。
また、Webサイトやランディングページの制作を専門とするWebデザイナーも、中小企業や個人事業主からの需要が安定しています。
マーケティング施策の一環としてのWebサイト制作や、ECサイトの構築など、ビジネスの成果に直結する業務を担当するため、継続的な案件を獲得しやすい特徴があります。
コンサルタント・ディレクター系職種
プロジェクトマネージャー、ITコンサルタント、テクニカルディレクターといった上流工程を担う職種も、フリーランスとして活躍する人材が増えています。
いずれも高度な専門知識が必要とされるため、報酬水準が高い傾向にあります。
ITコンサルタントは、企業の経営課題をIT技術で解決する役割を担います。
DX推進、システム刷新、業務効率化など、企業の重要な意思決定に関わるプロジェクトに携わることが多く、戦略立案から実行支援まで幅広い業務を担当します。
大手コンサルティングファームでの経験を活かし、独立しフリーランスとして活動する人材が増えており、企業からの引き合いも強い分野です。
プロジェクトマネージャーは、複数のステークホルダーを調整し、プロジェクトを成功に導く能力が求められます。
開発の現場経験に加えて、予算管理、リスク管理、チームマネジメントなどの総合的なスキルが必要です。
大規模なシステム開発プロジェクトでは、経験豊富なプロジェクトマネージャーの確保が欠かせないため、フリーランスとして高い報酬で契約されるケースが多く見られます。
ITフリーランス市場の今後の見通し

ITフリーランス市場は、今後も拡大を続けると予測されており、2030年には1兆3,619億円に到達する見込みです。
それに伴いIT人材全体に占めるフリーランスの割合も増加していく傾向にあります。
市場拡大の主要な要因として、企業のデジタル変革の加速が挙げられます。
あらゆる業界でDXが進む中、IT技術の専門家への需要は継続的に高まっています。
IT人材の不足が深刻化する中、この人材ギャップを埋める一つの解決策として、フリーランスの活用がさらに進むと考えるのは自然なことでしょう。
技術トレンドの面では、米国のMicrosoftやSalesforceといったグローバル企業でのエンジニア人員のレイオフや採用停止の動きが見られる一方で、CursorやDevinのような開発支援AIの台頭が著しく、求められるIT人材の定義が再構築されつつある状況です。
生成AIやクラウドネイティブ技術など、新しい技術分野の登場が市場に変化をもたらしています。
最新技術に精通した専門家は特に高い需要があり、フリーランスとして高報酬を得られる可能性が広がっています。
技術の変化が速く、継続的な学習とスキルアップが不可欠ではありますが、働き方の多様化という観点では、フリーランスという選択肢がより一般的になっていくでしょう。
若い世代を中心に、組織に属さない働き方への関心が高まっており、キャリアの早い段階からフリーランスとして活動する人材も増えています。
また、シニア層でも、定年後のキャリアとしてフリーランスを選択する人が増える可能性があります。
ただし、市場の拡大に伴い競争も激化することが予想されます。
フリーランスとして自分の強みを打ち出し、市場での差別化を図ることが、長期的に活躍するための鍵となるでしょう。
まとめ
ITフリーランスの人口は、今後も拡大を続ける見通しです。
働き方改革やリモートワークの普及、企業のIT人材需要の高まり、副業解禁といった複数の要因が相互に作用し、市場の成長を後押ししています。
職種別では、エンジニア、デザイナー、コンサルタントなど多様な専門分野でフリーランスが活躍しており、それぞれの分野で独自の市場が形成されています。
ITフリーランスとして成功するためには、市場動向を理解し、専門性を高めながら技術トレンドに対応していくことが重要と言えるでしょう。