HSPの人にとって、自分に合った仕事を見つけるのは簡単ではありません。

人との関わりが少なく、静かな環境でもくもくと作業できそうだという理由で事務職に魅力を感じる方もいるでしょう。

しかし、実際に働いてみると「あれ、思っていたのと違う」となってしまうことがあります。

事務職は、意外とHSPの特性とぶつかる場面が多いのです。

この記事では、HSPの人が事務職にストレスを感じやすい理由と、HSPの特性に合った働き方を8つ紹介します。

HSPに事務職が向いていない4つの理由

HSPに事務職が向いていない理由は主に4つあります。

以下、詳しく見ていきましょう。

視線が気になる

現代のオフィスは、壁や仕切りのないオープンレイアウトが一般的になっています。

一見、開放的で働きやすそうに見えますが、HSPにとっては落ち着かない環境です。

上司や同僚の視線が常に気になったり、作業中に同僚の動きが視界に入って集中を妨げられたりすることがあります。

周囲の様子に敏感なHSPにとって、このような環境がストレスの原因になってしまいます。

マルチタスク

事務職には、複数の業務を同時にこなす場面が多くあります。

例えば、作業中であっても電話が鳴れば出なくてはいけませんし、突然の来客で対応を求められることもあるでしょう。

頻繁に作業を中断されると思考が途切れ、再び集中するまでに時間がかかります。

HSPの人は一つの作業に集中する傾向があるため、切り替えが負担になりやすいのです。

また、タスクが立て込むと、どれから手をつけるべきか考えるだけで疲れてしまうこともあります。

人との関わり

事務職は、社内のみならず外部の人と関わる役割を担っています。

例えば、次のような業務が日常的に発生します。

  • 電話・来客対応
  • 経理への書類提出・確認
  • 上司への報告
  • 他社とのやり取り
  • クレーム対応
  • 他部署とのスケジュール調整

相手の感情を敏感に察知しやすいHSPの人は「機嫌が悪いのかな?」「何か気に障ったかな?」と必要以上に気にしてしまいます。

クレーム対応などでは相手の強い感情に影響を受けて、心が揺さぶられてしまいます。

人との関わりが増えるほど、神経をすり減らす場面が多くなってしまうのです。

単調な作業

事務職で行う作業は、以下のようにあらかじめ決まった手順で行う定型業務が中心です。

  • データ入力
  • 書類整理
  • 伝票処理

HSPの人は、仕事に対してやりがいを重視する傾向があります。

事務職という仕事は、短期的には落ち着いて取り組める反面、変化や刺激に乏しいともいえます。

単調な作業ばかりが続くと充実感が得られず、内面のモチベーションは低下してしまいます。

HSP=事務職がNGな訳ではない

ここまでHSPの人が事務職にストレスを感じやすい理由を述べてきましたが、必ずしも不向きな職種とは言い切れません。

実際のところ、職場の環境によって働きやすさというものは変わるからです。

例えば、大企業よりも小規模な会社の方が人間関係の距離が近すぎず、落ち着いて働ける可能性があります。

また、在宅勤務制度が整っていれば、ほとんどの問題は解決するでしょう。

コロナ禍を経て、リモートワークを取り入れる企業が増えており、HSPの人にとっては働き方の選択肢が広がってきています。

職場環境次第では、HSPの人でも事務職で快適に働ける可能性が十分にあります。

もし事務職を希望する場合は、業務内容や職場の雰囲気を調べるということが大切になってきます。

HSPの特性を活かせる働き方8選

事務職として働き続けることに自信が持てない方は、他の働き方も視野に入れてみるとよいでしょう。

ここでは、HSPの特性を活かしやすい職種を紹介します。

Webライター

Webライターは、HSPと相性のよい仕事の一つです。

文章作成が中心のため、会社に所属していても在宅勤務がしやすい職種です。

フリーランスであれば完全在宅で働けます。

人と接する機会が少なく、自分のペースで作業を進められる点はHSPにとって大きな魅力です。

読者の気持ちを想像しながら文章を組み立てる過程では、HSPの人が持つ共感力や繊細な感性が強みとなります。

プログラマー・エンジニア

プログラマーやエンジニアは、HSPの特性を活かしやすい仕事です。

チームを組んで働く場面はあるものの、基本的には個人で業務を受け持つことが多いでしょう。

注意力や正確性が求められる職種なので、慎重な性格のHSPの人にぴったりです。

また、リモートワークしやすい業種でもあることもおすすめの理由です。

動物飼育員

動物飼育員は、動物園や水族館などで動物の世話や健康管理を行う仕事です。

人とのやり取りもありますが、業務の多くは動物と接する時間にあてられます。

動物好きの人にとっては、ふれあいの時間が癒しとなり、精神的な安定につながりやすいでしょう。

言葉を持たない動物のわずかな変化に目を配る必要があるため、HSPの鋭い観察力が役立ちます。

心理カウンセラー

心理カウンセラーは、HSPの共感力と傾聴力を最大限に活用できる職業です。

相手の感情を敏感に察知し、思いを汲み取る能力は、カウンセリングの現場で大きな強みとなります。

また、一対一で向き合う仕事スタイルも、HSPの特性に適しています。

心理カウンセラーになるためには、公認心理師や臨床心理士など難易度の高い国家資格が必要だと思われがちですが、民間資格を取得し活動する働き方もあります。

図書館司書

図書館司書は、公共図書館や大学図書館などで本や資料の整理・管理、貸出業務、レファレンス対応などを行う専門職です。

静かで落ち着いた環境は、HSPの人にとって最適な職場といえます。

利用者の関心や意図をくみ取り、資料を提案する場面では、HSPの持つ洞察力が活かされます。

なお、正規職員を目指す場合には、原則として司書資格が求められます。

資格がない場合でも、非常勤職員として働きながら取得を目指す道もあります。

Webデザイナー

Webデザイナーは、Webサイトのデザインや制作を行う仕事です。

色の差異やレイアウトのバランス、ユーザビリティへの細やかな配慮など、HSPの繊細さが強みとして活かせます。

集中して作業に取り組む時間が多く、リモートワークが導入されやすい業界という点も魅力です。

Webデザイナーは必須資格がないため、未経験からでも目指しやすい職種です。

ただし、クライアントとの打ち合わせなどコミュニケーションが避けられない部分もあるため、働く環境によって向き不向きが分かれる職種でもあります。

イラストレーター

イラストレーターは、雑誌やWeb、広告、商品パッケージなどに使われるイラストを制作する仕事です。

イラストが得意なHSPの人におすすめです。

制作会社に勤める働き方もありますが、フリーランスや在宅ワーク、副業として活動する人も多くいます。

ハンドメイド作家

ハンドメイド作家は、アクセサリーや雑貨などを製作・販売する仕事です。

自分のペースでものづくりができ、素材へのこだわりや使う人への配慮など、HSPの繊細さが作品の魅力につながります。

オンライン販売を中心にすれば、人との接触を最小限に抑えられるので製作に集中しやすくなります。

ただし、企画から販売、顧客対応までを一人で担う必要があり、収益が安定するまでには時間がかかることもあります。

副業から始め、徐々に軌道に乗せていく方法が現実的です。

HSPが転職を考える際のポイント

転職を考えるときは、まず自分のHSPとしての特性を整理することから始めましょう。

一口にHSPといっても人それぞれで、誰もが同じ環境にストレスを感じるわけではありません。

どのような状況で疲れやすいのか、どんな働き方であれば落ち着いて取り組めるのかを明確にしておくことで、職場選びの基準が定まりやすくなります。

転職を希望する企業の公式サイトだけでなく、転職サイトの口コミやSNSの評判なども活用し、可能な範囲で職場の雰囲気を調べておくとよいでしょう。

環境を一気に変えることに不安がある場合は、期間を決めて段階的に準備を進めるのがおすすめです。

例えば、Webライターを目指すなら副業として始めてみる、プログラミングに興味があるならオンライン講座で基礎を学ぶなどです。

まとめ

HSPの人にとって、事務職は負担を感じやすい働き方といえるかもしれません。

働きづらさを感じている場合でも、能力や努力が不足しているわけではなく、環境との相性が原因の可能性があります。

働き方や職場を見直すことで、違和感を軽減できる場合も少なくありません。

繊細さや共感力、洞察力、創造性などHSPの特性は、環境が合えば大きな武器になります。

自分の特性を受け入れ、強みを活かせる働き方に出会えることを願っています。