フリーランスになると、会社員時代に当たり前に受けられていた様々な保障がなくなります。
具体的には労災保険や雇用保険には加入できないため、失業時やケガ・病気で働けなくなったときの所得補償が手薄になります。
こうした不安を補うために、民間団体の支援制度を利用する人も多いでしょう。
代表的なものの一つにITフリーランスを対象とした「ITフリーランス協会」があります。
ITフリーランス協会では社会保険の加入支援をはじめ、税務・法務の相談、福利厚生、案件紹介などフリーランスとして働く上で役立つサポートを幅広く提供しています。
この記事では、ITフリーランス協会の仕組みやサービス内容、加入のメリット・デメリットなどを解説します。
独立を検討している方や、すでにフリーランスとして活動している方もぜひ参考にしてください。
目次
ITフリーランス協会について

ITフリーランス協会の正式名称は「一般社団法人 ITフリーランス協会」といいます。
運営は、ITプロ人材のマッチングプラットフォーム「Bizlink」を展開している株式会社ビズリンクです。
日本の社会制度は正社員を前提に設計されているため、フリーランスへの支援が十分ではありません。
会社員なら健康保険や厚生年金に加入できますが、フリーランスは原則として国民健康保険と国民年金のみです。
保険料の全額自己負担に加え、将来の年金額や各種保障も限定的になります。
こうした構造的なギャップを埋め、フリーランスが安心して働ける環境を作ることを目的に設立されたのが、ITフリーランス協会です。
なお、名称が似ているため混同されがちですが、「ITフリーランス協会」と「フリーランス協会」は別の団体です。
ITフリーランス協会に加入するメリット

ITフリーランス協会に加入することで具体的にどんなメリットがあるでしょうか。
社会保険へ加入できる
ITフリーランス協会では「みん社保」というフリーランス向けの社会保険スキームがあります。
仕組みとしては、申込者が一般社団法人ITフリーランス協会の「非常勤理事」として参画し、理事報酬(月額56,000円)を受け取る形で社会保険の被保険者となるものです。
ここで流れを見てみましょう。
- 毎月99,000円を協会に支払う
- 協会から理事報酬56,000円が給与所得として振り込まれる
- 残りの43,000円が社会保険料負担分となり、協会が納付手続きを代行
- 99,000円(加盟費用)-56,000円(理事報酬)=43,000円
月額43,000円を負担することによって、協会けんぽの健康保険と厚生年金に加入している状態になります。
保険料を支払っている扱いになるため、将来の年金受給額が増えるだけでなく、傷病手当金や出産手当金、遺族年金といった会社員向けの保障も受けられるようになります。
ただし、「みん社保」はすべての人にとって保険料が安くなる制度ではありません。
目安として、前年の事業所得が約320万円以上ある場合に、国民健康保険・国民年金よりも負担が軽くなるケースが多いとされています。
単身世帯や所得が少ない場合、控除や減免制度が適用されている場合などは負担があまり変わらない、あるいは逆に増えることもあります。
複数サービスが受けられる
ITフリーランス協会の会員が希望すれば、以下のようなサービスが受けられます。
- 確定申告サポート
- 保険加入サポート
- 事務代行サービス
- 紹介奨励金制度
案件が探せる
ITフリーランス協会は、グループ会社のBizlinkと連携して案件紹介も行っています。
Bizlinkは高単価案件を豊富に扱っており、協会会員は優先的に紹介してもらえます。
現在のスキルや希望条件をコンサルタントに伝えるだけで、自分に合った案件を紹介してもらえるのが魅力です。
ITフリーランス協会に加入するデメリット

デメリットについても確認しておきましょう。
毎月の理事業務が発生する
みん社保を利用するためには、ITフリーランス協会の「非常勤理事」になる必要があります。
名目だけでなく、理事として実際に毎月1回、運営調査レポートへの回答が義務付けられています。
15分程度で完了する簡単な作業ですが、定期的な対応が必要になるため、人によっては負担に感じるかもしれません。
毎月9.9万円の支払いが必要
みん社保では、ITフリーランス協会に毎月99,000円を支払い、その翌月に給与報酬額として56,000円が振り込まれる仕組みになっています。
実質的な負担は月43,000円となりますが、いったん全額を支払う必要があるため、キャッシュフローが一時的に悪化する点には注意が必要です。
年末調整や確定申告に注意
給与報酬56,000円によって収入が増えたように見えるため、住民税や国民健康保険料の算定に影響が出る場合があります。
複数の収入源やスポット的な報酬が発生した場合、年末調整や確定申告で正しく申告しないと本来受けられる控除が適用されなかったり、逆に追徴課税を受けたりする恐れがあります。
ITフリーランス協会への入会方法

ITフリーランス協会への入会方法です。
入会条件・資格
ITフリーランス協会への入会には、以下の条件があります。
- ITフリーランス(エンジニア、デザイナーなど)として活動していること
- 年収320万円以上の所得があること(みん社保利用の場合)
- 個人事業主として開業していること(1ヶ月以内に開業予定であれば可)
入会手続きの流れ
入会は以下のステップでできます。
- 公式サイトから相談申し込み
- メール無料相談の実施
- 書類の送付
- サービス利用開始
ITフリーランス協会の評判・口コミ
ITフリーランス協会でみん社保を利用したユーザーの口コミを見てみましょう。
フリーランスとして独立して3期目となり、収入も安定してきましたが、高額な税金と保険料に頭を悩ませていました・・・。そんなときにネットで検索をしてこのサービスにたどり着き、最初は半信半疑でしたが、実際に収支を確認したところ本当に削減出来ていたので、とても助かりました!
35歳 システムエンジニア(東京)
独立したてで右も左も分からない中、社会保険の加入はもちろん、税理士さんをご紹介いただいて税務の相談をすることが出来たので、本業に専念することができるようになりました。
27歳 Webデザイナー(大阪)
ただでさえ安定しない個人事業主という立場を少々心配されていましたが、保障面の手厚い社会保険に加入したことで信用面も上がり、義両親からの風当たりが弱くなりました(笑)
40歳 エンジニア (東京)
ネガティブな評価
ITフリーランス協会が提供するみん社保の制度についてネガティブな意見もあります。
その多くが「保険加入を目的とした形式的なスキームである」といった指摘です。
つまり、制度の構造そのものが法的にグレーと見られているということです。
現在は、制度の運用自体が社会保険適用事業所として正式に認可されており、報酬の支給や保険料の納付も法に則って行われているため、違法とは見なされていません。
ただし、このような仕組みについて疑問を示す専門家も存在しており、制度の趣旨や適用範囲の見直しが今後行われる可能性も指摘されています。
2025年7月時点で違法性は否定されているものの、制度設計の妥当性が問われる余地は残されており、今後の動向に注意が必要です。
まとめ
ITフリーランス協会は、個人で働くエンジニアやデザイナーが直面しやすい社会保険や福利厚生の課題に対して、具体的な支援を提供している団体です。
「みん社保」は、フリーランスでも会社員と同様の社会保険制度に加入できる仕組みとして注目を集めています。
年収が一定水準(目安として約320万円以上)ある場合、社会保険料の負担を抑えつつ、将来の年金受給額を増やせる可能性もあります。
一方で、制度の構造自体がグレーゾーンとされる部分があり、法改正や行政による見直しが入るリスクも指摘されています。
利用を検討する際は、公式サイトの無料シミュレーションで条件を確認し、仕組みやリスクをよく理解した上で判断することが大切です。