面接では、転職や退職の理由について必ず質問されます。

その際、キャリアアップを挙げる方も多いでしょう。

キャリアアップは前向きな理由ではありますが、伝え方によってはネガティブに受け取られる可能性もあります。

本記事では、キャリアアップを退職理由にする場合の伝え方のコツと、具体的な例文をご紹介します。

退職理由はなぜ聞かれるの?

面接官が退職理由を尋ねることにはどんな意図があるでしょうか。

主に2つの目的が考えられます。

早期退職の可能性を見極めるため

企業は、採用した人材がすぐに辞めてしまうことを最も避けたいと考えています。

人材の育成には、時間も費用もかかるからです。

短期間で退職されるとそれまでの投資が無駄になります。

そのため、面接では退職理由を通じて「長く働いてくれる人かどうか」が見極められます。

方向性が合っているかを判断するため

企業は、応募者の退職理由から自社の働き方と合っているかを判断します。

例えば、「残業が多いのがつらかった」という理由で前職を辞めた人が、長時間労働が前提の職場に入れば、再びミスマッチが起こることが容易に想像できます。

一方、定時退社が基本の職場であれば、この退職理由には一定の説得力があるでしょう。

キャリアアップを退職の理由にするときの注意点

キャリアアップを退職理由にする際は、どんな点に注意すべきでしょうか。

キャリアアップは成長意欲を示せるため、企業側も納得しやすい理由ですが、「キャリアアップしたかったから」と漠然と伝えるだけでは説得力に欠けます。

以下のポイントを意識して伝えましょう。

具体性を持って伝える

キャリアアップを転職理由として挙げる場合は、具体性をもって伝える必要があります。

抽象的な表現ではなく、現在の業務においてどのような課題や限界に直面し、それをどう乗り越えるために転職が必要だと考えたのかを、具体的に説明することが重要です。

例えば、

  • 新規プロジェクトでマネジメント経験が不足していると痛感した
  • クライアントへの提案の際に技術的な知見が足りず、機会を逃した
  • 組織の規模や体制に限界があり、実現したい施策を進められなかった

といった体験を交えて伝えます。

これまでの経験をどう活かせるのかを伝える

これまでの経験を入社後の業務にどう応用し、どのように発展させていくかを伝えることも重要です。

前職で培ったスキルを踏まえ、自分が取り組みたい業務や貢献できる分野を示すと前向きな姿勢が伝わります。

さらに、応募先企業の事業内容と自分の目指すキャリアが一致している点に触れておくと志望動機との一貫性が強まります。

キャリアアップを退職理由にするときの例文

ここでは退職理由をキャリアアップとするときの例文をお伝えします。

職種ごとに載せていきますので、近しい職種のものを参考にしてみてください。

営業職

営業職で培った提案力・関係構築力をベースに、「次はどのような営業に挑戦したいのか」「どんなスキルを深めたいのか」を具体的に示すと、前向きな印象が伝わります。

営業職のキャリアアップ

法人営業として5年間勤務し、ルート営業を中心に既存顧客のフォローを行ってきました。安定した関係構築には自信がありますが、決められた枠内での営業が多く、提案力や企画力を活かせる機会が限られていました。今後は課題解決型の営業に挑戦し、自ら戦略を立てて提案する力を高めたいと考えています。営業としての幅を広げ、より大きな成果に貢献できるよう成長していきたいと強く思っております。

技術職

「技術を磨きたい」だけでなく、「どう貢献したいのか」まで具体的に伝えると、キャリアアップの意欲が伝わりやすくなります。

技術職のキャリアアップ

製造現場で品質管理を担当し、不良品対応や作業手順の見直しなど、実務を中心に取り組んできました。日々の業務で気付いた点は現場ミーティングで提案し、小さな改善を積み重ねることを意識してきました。今後は、現場全体の品質向上に取り組む立場として、標準化の推進や若手育成にも携わっていきたいと考えています。ご縁があれば、これまでの実務経験を活かし、現場で信頼されるリーダーを目指してキャリアを積んでいきたいと考えております。

マーケティング職

日々の運用業務だけでなく、「上流から関わりたい」「戦略面に進みたい」といった明確なキャリアの方向性を示すと転職理由に説得力が生まれます。

マーケティング職のキャリアアップ

Web広告の運用やSNSキャンペーンの企画・分析など、現場での実務に幅広く携わってきました。運用経験を通じて一定の成果を出せるようになった一方で、戦略設計やターゲット設定など上流フェーズにも関心が高まりました。今後は、商品企画やブランディングとも連携しながら、マーケティング全体を設計できるスキルを身につけていきたいと考えています。実務で培った数値感覚や施策運用の知見を活かし、戦略から実行まで一貫して担えるマーケターを目指しています。

事務職

補助業務にとどまらず、「仕組みを整える側に回りたい」という意欲と、それに裏づけられた行動経験を示すことがカギです。

事務職のキャリアアップ

一般事務として伝票処理や備品管理など、日常業務を正確かつ丁寧に進めてきました。業務を進める中で非効率な手順や情報共有の不備を感じ、自発的にフロー改善の提案を行った経験があります。今後は、マニュアルの整備や業務プロセスの最適化といった仕組みづくりに携わり、現場全体の生産性向上に貢献していきたいと考えています。

サービス職

サービス職は接客の延長ではなく、「組織運営」や「育成」といった視点を持っているかが問われます。

これまでの現場経験を土台に、より広い業務への関心と適性を伝えることが重要です。

サービス職のキャリアアップ

飲食店でホール業務を担当し、接客に加えて新人アルバイトの育成にも関わってきました。日々の業務を通じて、スタッフの動きやお客様の流れを見ながら現場を回す難しさと面白さを実感しました。こうした経験から、売上管理や採用といった店舗全体の運営にも興味を持つようになり、将来的にはマネジメントも担える立場を目指したいと考えています。現場で培った対応力を活かしながら、より組織に広く貢献できる力を身につけていきたいと思っています。

教育職

組織運営や教育の仕組み作りに関心を持っていることを伝えると、視座の高さや成長意欲が伝わりやすくなります。

教育職のキャリアアップ

学習塾で講師として授業や進路指導を担当してきました。生徒一人ひとりに向き合う中で、教えることの責任や手応えを実感してきましたが、次第に教室全体の運営や教材開発といった業務にも関心を持つようになりました。今後は、現場経験を活かしてより良い教育環境を作る側に回り、仕組みの面から教育の質を高めていきたいと考えています。指導現場のリアルを知る立場だからこそできる運営・企画に挑戦していきたいと思っています。

新しい分野・業界への挑戦を理由とする場合

キャリアアップを目指す中で、視野を広げる目的で新しい分野や業界に挑戦する人もいます。

完全に異なる職種への転職ではなく、これまでの経験を活かしながら新たな領域に挑戦する場合は、前向きな成長意欲として受け止められやすくなります。

ここでは、そのようなケースを想定した例文をご紹介します。

例文1

前職では〇〇職として〇〇業務に携わってきましたが、今後は成長が見込まれる〇〇分野でも経験を広げたいと考えるようになりました。

これまでの経験で培った〇〇のスキルは、新しい分野でも応用可能だと感じており、自分でも業界の動向を学びながら準備を進めてきました。

社内でも新たな領域への提案を行いましたが、組織方針により実現には至りませんでした。

〇〇分野に積極的に取り組んでおられる御社で、これまでの知見を活かしつつ新たな挑戦をしたいと考えております。

例文2

〇〇職として日々業務にあたる中で、以前から関心を持っていた〇〇の分野に対し、より深く携わりたいという思いが強くなりました。

そのため、〇〇に関する資格を取得し、社内でも関連業務に関わる機会を作りながら具体的な成果も出してきました。

ただ、現職ではその分野を専門的に担うポジションがなく、今後の成長を考えると限界を感じるようになりました。

御社では〇〇領域での専門性を深められると感じており、これまでの経験を土台に、新しいステージでさらに成長していきたいと考えております。

面接官からの少し意地悪な質問に対する回答例

面接官から、少し意地悪な質問が投げかけられることもあります。

答えに詰まらないように、代表的な質問に対する回答例を紹介します。

他の企業ではなく、なぜ当社なのですか?

回答例 「現在の会社でも、〇〇のスキルを高めるために社内勉強会や提案活動に取り組んできましたが、配属の制約が大きく、希望する業務にはなかなか携われませんでした。御社では〇〇分野の実績が豊富で、周囲から学べる環境が整っている点に魅力を感じています。私が目指す〇〇スキルの習得に必要な経験が得られるのは、御社のような環境だと考えております。」

前の会社でもキャリアアップできたのでは?

回答例 「前職でも〇〇のスキルを身につけ、〇〇という成果を上げることができました。ただ、さらに専門性を深めようと考えた際に、既存の業務や組織体制では新たなチャレンジの機会が限られていました。御社では〇〇に注力されており、より高度な業務にも携われる環境があると感じています。自分の強みを活かしながら、さらに成長できる場を求めて応募いたしました。」

今後具体的にどのようなキャリアプランを描いていますか?

回答例 まず1年目は〇〇のスキルを着実に習得し、目の前の業務でしっかりと成果を出すことを目指しています。2〜3年後には〇〇分野にも業務の幅を広げ、チーム内で信頼される存在として中心的な役割を担いたいと考えています。将来的には〇〇の分野でマネジメントや後進育成にも携わり、組織や事業の成長に貢献できる人材を目指しています。

まとめ

面接の際にキャリアアップを退職理由として伝えることは、前向きな印象を与えられるでしょう。

ただし、単に「成長したいから」だけではいささか説得力に欠けます。

これまで培ってきた経験やスキルをどう活かし、どのような成長を描いていくのかを明確に伝えることで、面接官に好意的に受け止められるでしょう。

自身の経験や目標に合わせて回答を組み立て、面接に臨んでください。