エンジニアを目指すときに悩むのが「バックエンド」と「フロントエンド」どちらを選ぶかではないでしょうか。

どちらもWebサービスやアプリ開発に欠かせない職種ですが、求められるスキル、領域はかなり違います。

この記事では、バックエンドエンジニアとフロントエンドエンジニアの違いを分かりやすく解説します。

バックエンドとフロントエンドについて

Webサービスは、ユーザーが操作する表側と、データ処理を担う裏側で成り立っています。

表側を「フロントエンド」、裏側を「バックエンド」といいます。

フロントエンドは、ユーザーが目にする部分です。

画面のデザイン、ボタンやメニューの配置、入力フォームの動作、操作性や見た目などが挙げられます。

ブラウザ上で動作し、主にHTML・CSS・JavaScriptなどの技術によって構成されています。

バックエンドは、データベースの管理やセキュリティ対策、外部サービスとの連携などユーザーの目には見えないサーバー側の仕組みです。

フロントエンドから送られたデータを受け取り、必要な処理を実行し、その結果を再びフロントエンドに返すことで画面上の表示が更新されます。

フロントエンドとバックエンドの連携によってWebサービスは初めて機能します。

バックエンドエンジニアの仕事内容

バックエンドエンジニアの仕事は、サービスの根幹となる「データの管理」と「処理の実装」に集中しています。

ユーザーからは見えない部分ですが、サービスの安定性や信頼性を支える重要な役割を担います。

データベース設計・管理

バックエンドエンジニアは、データベースの設計・管理を担当し、サービスで扱う全ての情報をどこに保存し、どう取り出すかといったことを決めます。

データベースの設計が不適切であれば、動作が遅くなったり、データに矛盾が生じたりします。

例えばネットショップでは、商品情報や会員情報、注文履歴、在庫データなど、膨大な情報を一元的に管理する必要があります。

会員情報と注文履歴をどのように関連付けるか、在庫データをどのタイミングで更新するかなど、業務の流れとデータ構造の両方を理解した上でシステムを設計する力が求められます。

業務内容に応じて最適なデータベースソフトウェアを選定し、バックアップや復旧手順の構築、処理速度の最適化も担当します。

サーバー側の処理開発

ユーザーの操作に応じて動作する仕組みを構築することも、バックエンドエンジニアの主要な業務です。

ログイン、商品検索、支払い処理、メール送信など、サービスの中核となる機能はすべてサーバー側で実装されます。

ネットショップで商品を購入する場合、ユーザーが「購入する」ボタンを押すとサーバーでは在庫確認、支払い情報の検証、注文データの登録、在庫数の更新、確認メールの送信といった一連の処理が行われます。

これらの処理は正確に、かつ適切な順序で実行される必要があるため、途中でエラーが発生した場合の例外処理も含めて設計・実装します。

セキュリティ対策もバックエンドエンジニアの責務です。

パスワードの安全な保存、不正アクセス防止、外部からの攻撃対策などを開発段階から組み込みます。

特に個人情報や決済情報を扱うシステムでは、高度なセキュリティ設計が欠かせません。

API開発・連携

現代のWebサービスでは、画面表示を担当する部分とデータ処理を担当する部分が、API(データをやり取りする仕組み)を通じて連携する構成が一般的です。

バックエンドエンジニアは、画面側が必要とするデータを適切な形式で提供するAPIを設計し、実装します。

APIの設計では、どの情報をどのように返すか、エラー時の対応をどうするか、本人確認をどう実装するかなど、細かな仕様を決めていきます。

また、外部サービスとの連携もバックエンドの担当範囲です。

決済サービス、配送業者のシステム、SNSログイン機能など、他社のAPIを利用する際の実装や、逆に自社のサービスを他社に提供するためのAPI開発も行います。

フロントエンドエンジニアの仕事内容

フロントエンドエンジニアは、ユーザーの目に触れる部分を作ることが仕事です。

見た目の美しさだけでなく、誰でも使いやすい設計まで整えるといった役割があります。

UI実装・デザインの具現化

デザイナーが作成したデザインの完成図を、実際にブラウザ上で動くWebページとして形にします。

さまざまな画面サイズに対応させ、異なるブラウザでも同じように表示されるようにし、読み込み速度も考慮しながら作り上げる必要があります。

HTMLでページの構造を作り、CSSで見た目を整え、スマートフォン、タブレット、PCなど、異なる端末で最適な表示を提供するため、画面サイズによる切り替えや柔軟なレイアウト設計まで行います。

視覚障害のある方が音声読み上げ機能を使って利用できるように、適切な要素を選択したり、キーボードだけで操作できるようにしたりと、全てのユーザーが快適に使えるサービスを目指します。

ユーザー操作への対応

ボタンのクリック、フォーム入力、ページのスクロールなど、ユーザーのあらゆる操作に対する反応をJavaScriptで制御します。

例えば入力フォームでは、ユーザーがメールアドレスを入力する際にリアルタイムで形式を判定し、誤りがあればすぐにエラーメッセージを表示します。

こうした仕組みによって、送信前に入力ミスに気づけるようになります。

また、ページ全体を再読み込みせずにデータを更新する仕組みも重要です。

例えば、商品をカートに追加した際に画面を切り替えずカート内容を更新する動作は、JavaScriptとAPI通信(AjaxやFetch APIなど)を組み合わせて実現します。

パフォーマンス最適化

ページの表示速度は、ユーザーの快適さに直結します。

フロントエンドエンジニアは、画像の最適化、JavaScriptやCSSファイルの圧縮、必要なタイミングでのみ読み込む仕組み(遅延読み込みなど)の実装によって、ページのパフォーマンスを高めます。

画像が大きすぎると読み込みに時間がかかるため、用途に応じて最適な形式やサイズに調整します。

その際、WebPなどの新しい画像形式を採用したり、スクロール位置に合わせて画像を読み込んだり、画面サイズごとに画像を切り替えたりといった方法を用います。

JavaScriptについては、不要なコードを削除したり、モジュール化して必要な部分だけを読み込むようにしたりすることで通信量を抑えます。

また、ブラウザの開発者ツールを活用して表示速度を測定し、ボトルネックを特定して改善する作業も受け持ちます。

バックエンド・フロントエンド必要なスキルの違い

バックエンドとフロントエンドで必要となるスキルにどのような違いがあるでしょうか。

それぞれの職種で求められる技術について見てみましょう。

バックエンドエンジニアに必要なスキル

バックエンドエンジニアには、Python、Java、Rubyなどのサーバーサイド言語の習得が欠かせません。

開発するサービスの性質や企業の技術基盤によって選択する言語は異なりますが、いずれかを深く理解し、実務で応用できる力が求められます。

データベースの知識も必須です。

データの検索・更新といった基本操作に加え、効率的なデータベース設計、インデックスによる検索速度の最適化、トランザクション管理による整合性の維持など、データを安全かつ正確に扱うスキルが必要となります。

近年では、開発やデプロイの自動化、システム監視、ログ管理といった運用スキルも重視される傾向にあります。

使用する言語に応じた開発環境やフレームワーク、デバッグツールなどを使いこなす能力も求められるでしょう。

フロントエンドエンジニアに必要なスキル

フロントエンドエンジニアの基礎となるのは、HTML、CSS、JavaScriptの3つです。

HTMLでWebページの構造を作り、CSSで見た目を整え、JavaScriptで動的な機能を実装します。

JavaScriptについては、ES6以降の新しい構文や機能を使いこなし、非同期処理、DOM操作、イベントハンドリングなどを自在に扱えるレベルまで到達しておく必要があります。

CSSでは、見た目だけの調整を超えた知識が求められます。

デザインの基礎知識、配色理論、タイポグラフィへの理解があれば、デザイナーとのコミュニケーションが円滑になり、より質の高い実装が可能になります。

キャリアパスと将来性

バックエンドエンジニアとフロントエンドエンジニアは、それぞれ違ったキャリアが広がっています。

バックエンドエンジニアのキャリア

バックエンドエンジニアとして経験を積むとアーキテクトやテックリードといった、システム設計や技術選定を主導する役割へと進めます。

また、データベーススペシャリストやセキュリティエンジニアなど、特定領域の専門家として深化していく選択肢もあります。

バックエンドの知識は、DevOpsエンジニアやSREへのキャリアチェンジにも役立ちます。

システムの運用・監視・改善を担当する職種では、バックエンドでの経験が大きな強みになるでしょう。

フロントエンジニアのキャリア

フロントエンドエンジニアは、UI/UXエンジニアやデザインエンジニアとして、よりデザインに近い領域で活躍する道があります。

ユーザー体験の設計から実装まで一貫して担当し、デザイナーとエンジニアの橋渡し役として価値を発揮します。

また、フロントエンドアーキテクトとして、技術選定や設計方針を決める役割に進むという選択肢もあるでしょう。

モバイルアプリ開発への展開や、フルスタックエンジニアとして、バックエンドとフロントエンドの両方を担当するキャリアも視野に入ります。

バックエンド・フロントエンドどちらを選ぶべきか判断するポイント

バックエンドとフロントエンド、どちらを選ぶかは、あなたの興味や適性によって決まります。

バックエンドが向いている人
  • システム構造を考えるのが好き。
  • 目に見えない部分の構築にやりがいを感じる。
  • 技術的課題の最適化に関心がある。
  • 全体を支える基盤設計に興味がある。
  • 論理的に物事を整理するのが得意。
フロントエンドが向いている人
  • 自分の作ったものを目で見て確認したい。
  • ユーザーの反応をリアルタイムで感じたい。
  • デザインやビジュアル表現に興味がある。
  • 細部にこだわるのが好き。
  • ユーザー体験を重視する思考がある。

まとめ

バックエンドエンジニアとフロントエンドエンジニアは、Web開発において異なる役割を担いながら、共に一つのサービスを作り上げる職種です。

バックエンドはサーバー側でデータ処理やビジネスロジックを担当し、フロントエンドはユーザーが触れる領域を担当します。

IT業界全体でエンジニアの不足が続いており、特に実務経験のあるエンジニアは引く手あまたの状況です。

自分の興味や強みに合った方を選択し、エンジニアとして活躍できるようにキャリアを築いていきましょう。