「IT導入補助金って個人事業主やフリーランスでも使えるの?」
「どんな場面で使えるのか、申請方法も知りたい」
そんな疑問をお持ちの方に向けて、この記事ではIT導入補助金の概要から申請の流れまでフリーランスに役立つ情報をわかりやすく整理してお伝えします。
国や自治体が実施している補助金制度のひとつであるIT導入補助金は、業務効率化やITツール導入を支援する制度です。
ぜひうまく活用して役立ててください。
目次
IT導入補助金とは

IT導入補助金は、中小企業がITツールを導入する際に国から受けられる費用補助制度です。
業務効率化やDXの推進を目的としています。
ただし、申請すれば必ず受けられるものではなく、審査を経て採択される必要があります。
申請枠について
IT導入補助金には、4つの申請枠があります。
①通常枠
まず「通常枠」は、業務効率化やDX推進を目的としたITツール導入を幅広く支援するIT導入補助金の基本的な申請枠です。
会計、財務管理、労務管理ソフトなどが対象で、補助率は原則1/2、最低賃金近傍の事業者は3/4(条件を満たす場合は2/3)となっています。
補助額は5万円から最大450万円まで申請可能です。
②インボイス枠
「インボイス枠」は、インボイス制度への対応を支援する目的で設けられた枠で、「インボイス対応類型」と「電子取引類型」の2つに分類されます。
インボイス対応類型では、会計や受発注、決済機能を持つITツールの導入が対象です。
電子取引類型は、発注者側がITツールを導入し、受注者に無償アカウントを提供するケースなどが該当します。
補助率は、補助額50万円以下の部分は中小企業で3/4、小規模事業者で4/5、50万円を超える部分は2/3です。
補助額は5万円から350万円まで申請でき、パソコンやタブレットなどのハードウェアも補助対象に含まれます(1台あたり最大10万円、補助率1/2)。
③セキュリティ対策推進枠
「セキュリティ対策推進枠」は、サイバー攻撃のリスクに備えるため、セキュリティ関連サービスの導入を支援するものです。
補助率は中小企業が1/2、小規模事業者は2/3で、補助額は5万円から最大150万円まで申請できます。
補助対象となるのは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載され、かつIT導入支援事業者が提供し、事務局に登録されたサービスです。
導入費用やサービス利用料(最大2年分)が補助対象となります。
④複数社連携IT導入枠
「複数社連携IT導入枠」は、複数の中小企業・小規模事業者が連携して同一のITツールやハードウェアを導入するケースを対象としています。
業界や地域全体での業務効率化やDXを目指す取り組みに向いており、補助率は1/2~4/5以内(ソフトウェア導入などは補助額50万円以下部分で3/4以内、小規模事業者は4/5以内、50万円超部分は2/3以内)、ハードウェアは1/2以内となっています。
補助額は基盤導入経費・消費動向等分析経費の合計で最大3,000万円まで申請可能です。
コーディネート費や外部専門家への謝金なども補助対象に含まれます。
補助を受けるための条件
IT導入補助金の申請にあたっては、以下の条件を満たしている必要があります。
- 日本国内で事業を営んでいること
- 個人事業主として開業届を提出していること
- 常時使用する従業員が、商業・サービス業では5人以下、製造業等では20人以下
- 地域別最低賃金以上の賃金を支払っていること
開業届を提出していないフリーランスの場合は補助対象外となるため、必ず個人事業主として正式に開業している必要があります。
補助対象となるITツールの例
会計・財務管理
- クラウド会計ソフト
- 確定申告ソフト
- 請求書発行システム
クラウド会計ソフトでは、freee、マネーフォワード、弥生会計オンライン、勘定奉行クラウド、PCA会計DXクラウドなど、確定申告用のソフトとしては、freee確定申告やマネーフォワード確定申告が挙げられます。
また、請求業務に役立つ請求書発行システムも補助対象に含まれており、マネーフォワード請求書、freee請求書、弥生の請求書などが対応しています。
業務効率化
- 顧客管理システム(CRM)
- プロジェクト管理ツール
- チャットツール、Web会議システム
社内の情報共有や業務進行の円滑化を目的としたツールも補助対象になります。
専門業務ツール
- デザインソフト
- 開発環境・IDE
- CADソフト、3Dモデリングツール
デザイン業務に用いるAdobe Creative CloudやAdobe Acrobat、Adobe Substance 3D Collectionなどは、通常枠の対象として認められています。
また、プログラミングやシステム開発で使用するIDE(統合開発環境)も、業務プロセスの効率化や自動化を目的とするものであれば含まれます。
建築・製造・設計の現場で使用される2D/3D CADソフトや3Dモデリングツールも例外ではなく、Autodesk FUSION 360、SOLIDWORKS、Vectorworks、SketchUp Proなどは補助対象です。
ハードウェア(インボイス枠限定)
- パソコン、タブレット
- レジ・決済端末
- 複合機・プリンター
インボイス制度への対応を目的とした場合、一定のハードウェアも補助対象になります。
ただし、会計・受発注・決済のいずれかに対応したインボイス対応ソフトとセットで申請することが必須条件となっています。
IT導入補助金の申請から補助金受給までの流れ

ここでIT導入補助金を活用するための流れを見ていきましょう。
事前準備(申請の2週間前まで)
GビズIDプライムの取得
IT導入補助金の申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必須です。
GビズIDは発行までに約2週間かかるため、最優先で申請しておきましょう。
なお、マイナンバーカードを活用すれば、即日で取得できる場合もあります。
SECURITY ACTIONの宣言
IT導入補助金を活用するには、情報セキュリティへの取り組みを自己宣言する「SECURITY ACTION」への登録が求められます。
これは、中小企業が自社で情報セキュリティ対策を行っていることを、「独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)」に対して示す制度です。
宣言は「★一つ星」または「★★二つ星」のいずれかを選択します。
一つ星では5項目の基本的な対策を実施、二つ星では一つ星の内容に加えて計25項目の取り組みを行うことが要件です。
申請
申請手続きは、IT導入支援事業者と連携して行います。
IT導入支援事業者の選定
IT導入補助金は、国に登録された「IT導入支援事業者」と共同で申請を行う必要があります。
補助対象となるITツールも支援事業者経由で選定・導入する形式です。
登録済みの事業者・ツールは、公式サイトで確認できます。
事業計画の策定
申請にあたって、「どのような目的でITツールを導入し、どのような効果を期待するか」といった事業計画を明確に示す必要があります。
費用対効果などの数値的根拠も求められるため、支援事業者と協力して綿密に計画を練ります。
交付申請書の提出
申請書類は、専用の電子申請システムを通じて提出します。
必要書類(事業計画、法人情報、見積書など)を準備し、アップロードします。
手続きに不備があると補助金が受け取れない可能性があるため、注意してください。
審査・交付決定
申請内容は事務局によって審査され、交付の可否が判断されます。
結果の通知までは通常1〜2ヶ月程度かかります。
IT導入補助金を申請する際の注意点

交付決定前の購入は補助対象外
IT導入補助金は、申請が通り、交付決定が通知された後に初めて補助対象の支出が認められます。
交付決定前に購入・契約したITツールやサービスは、たとえ補助対象のものであっても支援の対象外となります。
早まって発注しないよう必ず交付決定を待ってから導入を進めましょう。
登録済みのITツールのみが対象
補助金の対象となるのは、事務局に登録されているITツールに限られます。
導入を検討しているソフトやサービスが制度の対象となっているか、必ず公式サイトで確認してください。
未登録のツールを申請しても、残念ながら補助の対象にはなりません。
ツールの継続利用が必須
補助金を受け取った後も、導入したITツールは一定期間継続して使用する義務があります。
原則としてツールの納品日から1年間は、解約せずに利用を継続しなければなりません。
もしこの期間内に解約した場合、補助金の返還を求められることがあります。
特に「インボイス対応類型(インボイス枠)」では、2027年3月まで継続利用していることを証明する必要があります。
証拠書類の保管が必要
実績報告の際には、導入したITツールが実際に設置・使用されていることを証明する資料が必要です。
以下の書類を準備し、適切に保管しておきましょう。
- 導入・設置の様子が確認できる写真
- ソフトウェアの利用状況がわかる画面キャプチャ
- 支払いに関する請求書・領収書(原本)
また、これらの書類は、後日行われる監査や実績確認でも提出を求められる可能性があります。
まとめ
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が業務効率化やデジタル化、インボイス制度対応、セキュリティ強化などを目的にITツールを導入する際、費用の一部を国が補助する制度です。
申請には、国に登録されたIT導入支援事業者と連携し、GビズIDの取得やSECURITY ACTIONの宣言、事業計画の策定など、いくつかの重要な手続きが必要となりますが、要件さえ満たせばフリーランスでも利用できます。
補助対象となるITツールやハードウェア、申請枠や補助率には細かな条件があるため、公式サイトや支援事業者とよく相談し、制度を正しく理解した上で計画的に進めましょう。
IT導入補助金を上手に活用することで、業務の効率化や生産性向上につながります。
ぜひIT化・DX推進を進めるためにIT導入補助金を活用してみてください。